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江戸幸勅使川原製作所

銅おろし金 江戸幸 勅使河原隆



料理の美味しさを引き出す、大切な薬味。江戸の人々がこだわりぬいて、たどりついた銅おろし金。
 中国の「三才図会」の影響を受け、江戸時代に医師の寺島良安が編んだとされる日本の博物誌「和漢三才図会」。
 その中に銅のおろし金に関する記述があります。「薑擦(わさびおろし)は銅を以て作る」。銅おろし金が、当時すでに広く庶民の間で使われていたことがうかがえます。
 銅おろし金の良さは、何といっても、食材の繊維だけを切り、組織を必要以上に壊さないことから、大根おろし、おろし生姜が水っぽくならず、口当たりが驚くほど、まろやかで、柔らかになることです。銅はもともと弱い素材ですが、叩くことで、分子同士が強く結びつき、硬くしまります。さらに錫がけをし、酸化に強くすることで、食材の味を変えず、安全に、長く使えるとして、おろし金だけにとどまらず、さまざまな調理器具が生み出されていきました。

 国立国会図書館ウェブサイトより転載



新しいことに寛容だった父親の元で修行したから、自分なりに、なんとかやってくることができた。
 コン、コン、コンと鏨(たがね)を銅板に打ち込む音が、リズミカルに響き渡る。その背後に流れるのは、スタンダードジャズのナンバー、ハリー・ジェームス、フランク・シナトラ、ローズマリー・クルーニー、そしてマイルス・デイビスである。
 現在、東京で唯一人となった銅おろし金の職人、勅使川原 隆さんの仕事場は、いつも柔らかな音楽と淹れたてのコーヒーの香りがあたりを包む。
 銅おろし金を主に作っているが、銅器全般を作る職人でもある。鍋や玉子焼き器、酒器など、客の注文に応じて何でも作り上げる。
首都高ジャンクションから程近く、荒川と綾瀬川に挟まれた静かな住宅街、ここ小菅に工房を構えて、すでに60年近くの歳月が流れた。
「十代の頃、海外の映画に憧れて、映画で流れるジャズが好きになったんです。海外のハードボイルド小説も好きで、ミッキー・スピレインのマイク・ハマーシリーズとかね、もう夢中で読んだ(笑)。親父が進歩的な考えの人だったから、映画とか見に行くのも許してくれてね。たくさん見たなあ」
 勅使川原さんが、職人の世界に入ったのが、18歳の頃。戦後、一気に欧米文化が再び街を賑わし、若者だった勅使川原さんは大いに魅了されたと振り返る。
 しかし、当時は、家を継ぐのが当たり前の時代。他の道へ行くなどの考えは浮かばなかったそうだ。
「ただ、僕は物づくりに向いていないんじゃないかと思っていたんです。工作も下手だし、絵も下手だしね。でも、親父が何度も作れば体が覚えるから大丈夫だといってくれてね。失敗してもいいからと、新しいこともどんどん挑戦させてくれた。それで、なんとかここまでやってこれたんだと思いますね。今でも自分の仕事をうまいとは思わないけど、ま、お客さんがいいって言ってくれてるんで、まあ、いいのかなと……(笑)」


 ▲リズミカルに鏨を打ち込む勅使川原さん。



 ▲先代の父親との思い出を照れくさそうに振り返る。


職人は自分の道具は自分で作るのが当たり前。いろんな道具があるけれど、鏨(たがね)は、銅おろし金の命。
 冒頭で述べたように銅の世界は、扱う製品の範囲が広い。作る品によって、使う道具も違うし、技術も異なる。
「一つものにするには、10年はかかる。職人は道具から手作りするからね。だから、どうしたって一人前になるには、何十年もかかっちゃうんですよね」
 銅おろし金で使われる道具の中で、もっとも重要なものは、鏨(たがね)。勅使川原さんは、若いの頃から、コークスで鋼を焼き、叩いて、自分専用の鏨を作ってきた。
「親父は手取り足取りは教えてくれなかった。だから、親父が道具を作るのをこっそり見てね。覚えていった。鏨一つでも、親父と僕とじゃ、手の大きさが違うから、角度がちょっと違うんだ」
 そういって取り出して見せてくれたのは、百本以上もの鏨。すべて自作だという。丸い棒状の鋼を叩いて鍛え、削って仕上げていく。強さ、角度、ほんのわずかでも狂えば、おろし金の目は立たない。繊細な仕事である。
「鏨作りで、一定の角度をきちんと出せるようになれば、ほぼ一人前。でも、親父から褒められたことなんてなくてね。何十年経った頃だろう。親父がテレビの取材を受けた時に、息子もようやく一人前になったと答えているのを聞いてね。嬉しかったなあ」
 しかし、当時の状況は厳しくなる一方だったと振り返る。オイルショックを境に銅の値段が上がり続けていったのだ。同業者がその時期にだいぶいなくなってしまったという。

 ▲継ぎ目のない見事な銅茶筒、一級品である。


 ▲熱伝導率の良さが銅の持ち味。銅鍋は料理人の憧れだ。


 ▲上側が素材となる丸棒鋼、これを叩いて鏨を作る。



人間がやると機械のように目は揃わない。でも、実は美味しいおろしを作るためには、そこが大事なんです。
「下請けをしていた職人たちが、次々とやめていったんですね。うちは下請け中心じゃなかったから、良かったんだ。それに、プラスチックや機械による目立ても出てきて、生産量じゃかなわないから、みんな辞めちゃったんだろうね」
 そういって取り出して見せてくれたのが、一枚の銅おろし金。これは機械で目立てたものだという。機械で目を立てると当たり前だが、刃が一直線に揃っている。しかし、末広がりの生地板に対して、長方形にしか目が立たない。これに対して、勅使川原さんの銅おろし金は、生地板に対して、刃が末広がりに広がっている。

 ▲立てられた目を見れば、人の手によるものかどうかはすぐにわかる。左が機械による目。これに対して、右が勅使河原さんの目立てである。

「僕の目立ては、機械みたいに刃は一直線には揃わない。向こうがみえないでしょ? でもね、これが大切なんだ。この方が大根をおろすのに力がいらないんです。目がつまらないからね。だから、さらりとおろせる」
 一見、直線に隙間なく揃った刃の方が切れそうにも思うが、それだと実は目がつまりやすい。目がつまると、大根がすべってしまう。力を入れれば入れるほど目がつまり、まったくおろせなくなる。何度も目を掃除しながら、できあがった大根おろしは、当然ながら、ひどく水っぽい。
「この機械目のおろし金はお客さんが展示会に持ってきたんだよね。新品で買ったのにすれないから直してくれって。でも、機械の物は目を立て直すことができないんです。代わりに僕のを持っていってくださいと渡したら、次の日、やってきて、すごくすれるよと喜んでくれてね。もう、それいらないから処分してっていわれたの(笑)」


 ▲左の機械は整然と並び、見通しがいい。目も小さめだ。それに対し右の勅使河原さんの目は向こう側は見えない。



もっといい目の立て方があると思っている。職人の欲は尽きることがないのかもしれない。
 現在、勅使川原さんは年間を通して、全国の百貨店や展示会場を飛び回っている。今となってはおろし金の目を立てられる職人さんは、全国でも3名ほどしかいないから、オファーが絶えないのだという。
「もう、ムリはきかない年になってきているから、できる範囲でやってます。でも、僕にもまだ職人としての欲はあってね。目の立て方も他にもっといい方法があるんじゃないかと常に模索しているんですよ」
 おろし金の刃は、拡大してみるとわかるが、おろす方向に対して、微妙に斜めに刃が入るように、上下に目が立てられている。目と目の間は、微妙な差をつけて、空けてある。
 この意味は二つあり、一つは、無駄な組織を壊さず、繊維だけを切り、柔らかな食感と瑞々しさを保つため。もう一つは遠い将来、刃が磨耗したら、空いている場所に目を立て直すためだ。機械ではそれができない。

「音楽は演奏家のものではなく、聴く人のものだ」という言葉がある。プロの演奏家として、自分を戒める言葉だが、きっと職人の手によって生み出される道具も同じことがいえるのだろう。
 作る側の効率だけを考え、生まれた機械による生産品と、使う人の立場にたって、職人が作り出した道具では、そもそもが同じステージにすら立っていないのかもしれない。
使ってもらえばわかるその違い。ぜひ、ご自身の舌でで堪能していただきたい。

 ▲人の手に当たらぬように立てられた目。力が要らないので、怪我をすることはまずない。


 ▲長年使い込まれた作業台。すべてが手作り。
銅玉子焼き器

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7,350 円
完売御礼
銅片手鍋 φ200mm

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銅おろし金 3号(両面目立て)

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銅おろし金 1号(両面目立て)

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完売御礼
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