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サガラ

棕櫚たわし 佐柄真一



日本人によって考え出された環境に優しい生活用品。
 たわしは、亀の子たわし西尾商店の初代西尾正右衛門師が、明治40年にどろ落し用マットの切れ端を束ね、釜洗いに使っている人がいるのをを見て考案したといわれています。
 材料に椰子の実を使ったものと、棕櫚(シュロ)皮をつかったものがあります。以前は、各家庭の台所には必ずといっていいほどあったものですが、現在はナイロン製で機械で作るものが多くなり、値段的にも大量生産できるため、たわしを手作業で作る職人は少なくなっています。棕櫚製のたわしは、素材が柔らかく持ちが良い事で評判です。



兄弟で作り続ける東京で唯一の棕櫚タワシ工房

 ▲刈り込み作業中の佐柄真一さん
 バタバタと乾いたエンジンのような音があたりに響き渡る。
 高床式の木造家屋の一階部分は車庫になっており、音はその向こうから響いてくる。二台の車の間を抜けると、上へ続く古い木板の階段があって、それを上って行くと、板貼りの作業場が広がっている。日本の伝統的な納屋のようでありながら、どことなく異国の香りが漂うのは、独特な形の手製の工具類や、親水路に面した木枠の窓から見える葛飾の街並み、それに晴れた夏の日、窓から降り注いだ強い陽射しが、ジブリのアニメで描かれるような欧風な印象を与えるからかもしれない。
 床が震えるほどのモーター音の正体は、ねじったタワシ棒の刈り込みをおこなう機械。いわゆる刈り込み機。それは長いベルトで回転させるタイプの大きな物で、座席が付いている。すぐそばでゴウゴウと負けずに唸りをあげている巨大な換気扇をプロペラ代わりに装着したら、飛べそうな雰囲気だ。
 棕櫚タワシの伝統工芸士、佐柄真一さんは、我々が訪ねた時、まさにその機械に乗り込んで、刈り込み作業の真っ最中だった。


タワシ作りで大切なのは、ねじり。均等に繊維が揃ったタワシは、丈夫で長持ちする。

 ▲初代から使っているという手製のねじり機


 ▲かなりの力が必要だが、やりすぎると切れてしまう
 挨拶をすると、人懐っこそうな笑顔を浮かべ、機械を止め、まず、タワシ作りでもっとも重要な工程の一つだというねじりの作業を見せてくれた。
 お祖父さんの代から使っているという、ねじり機に針金を二つ折りに装着し、棕櫚の繊維をたばね、針金の間に均等に挟んでいく。それを一気にねじる。ねじり終わると針金を外すのだが、この瞬間、テンションが相当かかっているため、まるでライフルのような激しい音がする。

 試しにやらせてもらうと、見た目通り、かなりの力がいる作業。とてもじゃないが、これを何本もねじるのはきつい。しかも、力を入れすぎてもだめで、限界を超えると針金がちぎれてしまう。その切れるか切れないかのぎりぎりまでねじるといいタワシになるという。絶妙の力加減が要求される仕事なのだ。

「らせん状のねじり幅が均等でないといいタワシにならないからね、均等になるまで、棕櫚を揃え、ねじっては戻し、また、ねじるの繰り返し、面倒だろう(笑)」

 タワシ製作は、佐柄さんで三代目。学校を卒業すると同時に修行をはじめ、もう半世紀近くの月日が立つ。
 現在は弟の誠二さんと二人で、工場を切り盛りしている。誠二さんは、もともとは会社員。大手の企業に勤めていたものの、父親の他界をきっかけに、この道に入ったという。


 ▲材料の棕櫚を丁寧に揃えるのは弟の誠二さんの役割
「暑いでしょう? クーラー入れても、刈り込みの埃ですぐ壊れちゃう。だから、夏場は汗だくでやってるんだ」と誠二さんは笑う。

 確かに暑い。ちょっと手伝っただけで、汗が吹き出してくる。でも、開け放たれた窓から、時おり、吹き込む風が気持ちいい。

「ものづくりは追求できる点がいいよね。タワシは簡単そうで、奥が深い。おそらく、僕も他の人より5年は先をいっている自信はあるんだけど、兄貴はそれよりもさらに5年進んでいる」と誠二さん。


素材、人、時代が変われば、それに合わせる。これで終わりはない。
 伝統工芸品なのに、まだ進化を続けているという話に興味を持った。あれこれ聞いているうちに、時間が経つのもすっかり忘れていた。
 佐柄のタワシの製作工程は、棕櫚の繊維を選別する段階から、ねじりに入るまでに30工程以上の作業がある。この工程は日々、変化し続けているという。その一つ一つの理由が理論的で、説得力があるのは、それだけ経験を積み重ねてきた証拠だ。
 「材料の質も変化してるし、使われ方も昔とは違っているから、昔と同じ方法じゃだめなんだ。工程はどうしても増えていくね」と兄の真一さんが言葉をつなげた。


 ▲作るタワシによって、針金の素材も太さもミリ単位で変わる

佐柄の棕櫚タワシは、プロの料理人、工芸職人の間では、有名だ。お得意先リストには、聞き覚えのある名前が並ぶ。
 今、我々がふだん街中で手に入るタワシは、棕櫚ではなくパーム(椰子)がほとんど。しかも、そのすべてが海外生産だ。
 材料も、生産も外国、その結果、安く、そこそこのタワシが手に入るようになったものの、同時に棕櫚タワシを製作する職人が国内にほとんどいなくなってしまった。
 だから、値段は高めでも、質の良い道具を求めるプロの世界では、佐柄のタワシはその価値を認められている。

「棕櫚の材料は、年々悪くなっている。質が悪くなっているというよりは、使えない部分が混じる量が増えてるんだ。安定して材料が入らない上に、手間がかかるんじゃ、誰もやらなくなるよね」

 棕櫚の持ち味は、そのしなやかさとコシ。
 そのためには繊維を揃え、適切な密度に束ね、均等にねじる必要がある。
 そのための下処理にかかる膨大な時間と手間は、惜しまない。佐柄の棕櫚タワシが、触り心地からして他のタワシと一線を画するのは、そうした素材を見極め、妥協を許さない職人としてのプライドが背景にある。

 ▲刈り込み後、タワシの形に仕上げる


 「私はタワシを伝統工芸とは思ってないんだ。昔のとは違うからね。だから、自分を伝統工芸士と思ったこともない。じゃあ、なんだと言われても、言葉は見つからないから、ただのタワシ屋。それでいい」

 今、この佐柄のタワシを受け継ぐ人が、誰もいないことが本当に残念だと思う。
 日本の伝統産業が、すべからく衰退の一途を辿っていることはご存知の通りだ。時代の流れだから仕方が無いとも思う。でも、職種が一つ減れば、その分、その国の若者の働く場所が減ることになる。

 ・・・とは、言ったものの、
そんな通りすがりの安っぽい感傷などよそに、二人のご兄弟は、今日も、明日も、たんたんと棕櫚を選り、ねじり、いまにもどこぞへ飛んでいってしまいそうな刈り込み機に乗り込み、タワシを作り続けていくに違いない。今より良い物を作るために、侃々諤々、兄弟で議論をし続けるに違いない。それしかないし、きっと、それでいいのである。なんとなくお二人を見ていると、古びた自転車工房で、飛行機を発明したライト兄弟が思い浮かんだ。彼らもあとを継ぐ者はいなかったという。だからといって、今日、航空技術が失われたわけではない。
 日々、黙々とやるべきことを続けることが、新たな流れに繋がることを信じ、今は、消費者として、佐柄のタワシの使い心地を楽しめばいい、そう思い直した。

 ▲最後の仕上げバサミを入れる佐柄兄


 ▲何十という下処理の工程を黙々と続ける佐柄弟



 ▲タワシは密度が高い方がいいが、それだけ作るのは難しくなる、コストもかかる。一般のタワシと並べた佐柄のタワシ(右)


 ▲差は素人目にも一目瞭然だ。量産ができないから、都内でも一部の専門店にしか卸していない


佐柄真一氏 経歴
昭和21年葛飾区宝町生れ
葛飾区伝統工芸士



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